2026年8月13日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領によって、米海軍および米国の造船産業基盤の再建に向けた大統領覚書に署名するという発表がありました。(大統領覚書|ファクトシート)
- 米国内に新工場を建設・技術供与する外国造船企業に米海軍艦艇建造への参入を認める。
- 高速攻撃型潜水艦の増強に対応する第5の公営海軍工廠の設置計画を120日以内に求めている。
- NAVSEA(海軍海上システム司令部)の人事・組織改革の検討も120日以内に指示している。
覚書は、米海軍がこれまで過度に複雑な設計や度重なる設計変更により、コスト増加・遅延・計画中止を繰り返してきたとしている。造船企業間の生産能力・競争の不足により、海軍の主要造船プログラム6件で大量の受注残が生じ、商業造船セクターも国際競争力を欠いているとし、疲弊した造船産業基盤とその周辺サプライヤー基盤の縮小が、遅延とコスト増をさらに拡大させていると指摘している。国防総省には、実績のある信頼性・費用対効果の高い技術や船体設計を活用しつつ、当面は外国供給元からの調達を可能にする契約を結ぶ一方で、米国内の造船産業基盤への投資も同時に促す方針を求めており、これは砕氷船など他の大型装備調達と同様の考え方だとしている。2025年4月の大統領令14269号「米国の海洋覇権の回復」を土台に、今回の覚書でさらなる措置を講じるとしている。
空母の設計面では、国防長官(海軍長官と協議のうえ)に対し、CVN-81(次期原子力空母)の建造において電磁式航空機発艦システムと先進兵器用エレベーターを蒸気・油圧式システムに置き換えるための計画を、日程とリソース要件を含めて60日以内に大統領へ提出するよう求めている。
覚書の中核をなすのが、2025年10月の米国・フィンランド間の中型砕氷船建造に関する覚書を手本とした「フィンランド方式」で、これは最大3つの艦種区分に適用されている。外国供給企業が、(1)米国内に新造船所を建設するか既存造船所の所有権・過半数株式を取得し、最初の2隻以降はすべて米国内の造船所で建造すること、(2)米国市民の労働力を雇用・訓練すること、(3)親会社である外国造船所が持つ独自の造船技術を米国内の造船所に供与すること、(4)建造・整備に用いるサプライチェーンを米国内から調達すること、の4条件を満たす場合に認められるとしている。
国防長官には90日以内に、対潜水艦戦・水上戦・護衛任務に対応できる水上戦闘艦について、上記の国際調達モデルに基づく提案を可能にする新たな競争的調達方式の計画を、商務長官・運輸長官と連携のうえ提出するよう求めている。この計画には、洋上補給用のコンソリデーテッド・カーゴ補給タンカーとロールオン・ロールオフ船についても、フィンランド方式に基づく調達提案を可能にする内容を盛り込むとしている。
あわせて、これらのプログラムでは完成された親設計に対する反復的な設計変更を禁止し、変更には国防長官の承認が必要になるとしている。国防長官には、10 U.S.C. 8679条に基づく国家安全保障上の判断権限と、外国造船所での軍艦建造禁止規定の適用除外を議会に通知する権限が委任されるという。
さらに覚書は、国防長官に対し120日以内に、原子力潜水艦・空母の即応性向上に向けた計画を求めている。民間セクターの能力活用に加え、「第5の公営海軍工廠」の設置を検討し、今後20年間の高速攻撃型潜水艦隊の拡大に対応するドック容量、太平洋艦隊に近い立地(本土・アラスカ・ハワイ・米領を含む)、現行および計画中のすべての潜水艦クラスに対応する最大3つの新規ドライドック、官民連携などの資金調達手法、日程とリソース要件を計画に含めるとしている。
あわせて90日以内には、潜水艦修理産業基盤向けに新品・再生部品を扱う「コンポーネント修理センター」の設置計画も求めており、ロサンゼルス級・バージニア級・シーウルフ級・オハイオ級・コロンビア級それぞれについて、最低1隻分の予備部品(シップセット)を維持できる体制を目指すとしている。
覚書は最後に、NAVSEA(海軍海上システム司令部)についても120日以内に見直しを行い、人事・組織・構造改革の提言をまとめるよう求めている。改革の目的として、艦艇・システムの納入速度に基づく成果主義の徹底、官僚主義や煩雑な手続きの削減、NAVSEA内の各部門間で優先順位が競合し艦艇・システムの複雑化やコスト高を招く事態の解消、完成された親設計に対する再設計や反復的な設計変更の禁止を挙げている。













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