2025年11月、Meta Platforms(本社:アメリカ・カリフォルニア州)が誇るチーフAIサイエンティスト、ヤン・ルカン氏が、同社を退社し独自のAIスタートアップを立ち上げる計画であることが、英フィナンシャル・タイムズの報道で明らかになりました。ルカン氏は現在、資金調達の初期段階にあるとされています。
- MetaのチーフAIサイエンティスト、ヤン・ルカン氏が退社を予定。
- 独自のAIスタートアップを立ち上げ、「世界モデル」の開発に注力する見込み。
- Metaは新たなAI戦略として“超知能(superintelligence)”路線に大転換中。
ヤン・ルカン氏(65歳)は、機械学習の世界的権威であり、2018年には「AI界のノーベル賞」とも称されるチューリング賞を受賞した人物。2013年からMeta(旧Facebook)のAI研究機関「FAIR(Fundamental AI Research)」を率いてきた。
今回、ルカン氏はMetaを離れ、AIの新たなアプローチ「世界モデル(World Models)」に特化したスタートアップを立ち上げる方向で動いており、初期資金の調達に向けた交渉が始まっているとのこと。世界モデルとは、物理法則や空間的特性を含む「現実世界のダイナミクス」を再現できるAIであり、自動運転などの高度なAI開発に活用される技術。
Meta内部では、マーク・ザッカーバーグCEOが「AI超知能」の開発を加速させる方針を打ち出しており、従来の長期研究型のアプローチから、製品化を急ぐ実用志向へと大きく方針転換している。この戦略変更に伴い、2024年夏にはScale AI創業者のアレクサンダー・ワン氏を起用し、新たな「superintelligence部門」を創設。ワン氏はわずか28歳でありながら、MetaのAI戦略の中枢を担うこととなり、ルカン氏は現在このワン氏の直属となっている。
MetaはScale AIに対しても約143億ドル(約2兆円)を投じて49%の出資比率を取得。ChatGPT共同開発者の1人であるショウジア・ジャオ氏も新チームに招き入れるなど、AI領域への積極投資を続けている。
しかし、ザッカーバーグ氏が「AI開発に1,000億ドルを超える投資を行う」と発言したことが一部投資家の不安を呼び、10月末にはMetaの株価が12%以上下落。約24兆円の時価総額が一夜にして吹き飛んだとも報じられている。
さらに、AI研究部門の人員も整理が進められ、2025年にはFAIRの研究職600名が削減。主要メンバーであるジョエル・ピノー副社長も退職し、カナダのAIスタートアップ「Cohere」へ移籍している。
ルカン氏のビジョンと今後
ルカン氏は、現在の大規模言語モデル(LLM)について「便利ではあるが、人間の推論を完全に再現することはできない」とし、言語ではなく「映像」や「空間情報」から物理世界を学ぶ次世代型AIに注力してきた。
その開発には10年単位の時間がかかる可能性があるとしながらも、長期的に真の人工知能(AGI)に近づく道として、世界モデルの重要性を強調してきた。
Meta内部の短期志向な方向転換と、ルカン氏の長期研究への情熱との間に溝が生じた結果、独立起業という選択を取るに至ったと見られている。
















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