2026年8月31日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領によって、ベネズエラの民間石油会社ノース・アメリカン・ブルー・エナジー・パートナーズ(NABEP)と締結した石油合意の詳細を公表するという発表がありました。(ファクトシート|NABEPプレスリリース)
- NABEPは、17油田・計650億バレルの埋蔵量について100年間の採掘権を取得し、米政府側に株式35%と生産量20%の優先購入権を提供するとしている。
- 今後5年で日産100万バレルを目指し、最大1,000億ドルを投資、25年間の使用料・税収は約2,000億ドルと見込んでいる。
- 米政権は合意をモンロー主義の再確立と位置づける一方、中国は権益保護を要求しており、合意の持続性には懐疑的な見方もある。
トランプ政権は2026年8月28日ごろにベネズエラとの大規模な石油合意を発表し、8月31日に詳細なファクトシートを公表した。今回の合意は、国務長官マルコ・ルビオ氏と陸軍長官ピート・ヘグセス氏が署名したものとされている。合意の相手方であるNABEPは、ベネズエラ人実業家アレハンドロ・ベタンクール氏(46歳)が経営する民間石油会社で、チェブロンに次ぐベネズエラ第2位の石油オペレーターとされている。同社は2024年に設立され、現在はバルバドスを本拠とし、マラカイボ湖周辺やオリノコ・ベルト地帯で日量約20万バレルを生産しているとされている。
ファクトシートによると、米国防省(戦略資本局)がNABEPの親会社株式35%を取得し、米国務省は全油田の生産量の20%を生産コストで優先購入する権利を、残り80%についても優先交渉権を持つとしている。ホワイトハウスは「米国の納税者に負担ゼロ」と説明しているが、米国が取得した株式への対価は今回の発表では明示されていない。ガバナンス面では、米国政府がNABEPの取締役全員の任命に拒否権を持ち、取締役の過半数は米国市民でなければならないとしている。
ベタンクール氏については、その経歴に対して複数の見方がある。同氏はチャベス政権下でDewick Associatesを通じて無入札で約50億ドルの電力インフラ建設契約を受注したとされており、「ボリバル革命の御曹司(bolichicos)」の一人と呼ばれることもある。米国や欧州の当局が資金洗浄疑惑について調査を行っていたとされるが、現時点でいかなる法域においても刑事訴追はされていないとNABEPの法務顧問サラ・シュラキ氏は述べている。スペインの高等裁判所は2026年3月に関連訴訟を棄却した。
一方、今回の合意に対しては複数の観点から批判的な声が上がっている。17カ所の油田のうち少なくとも5カ所は従来から中国企業が管理していたとされており、中国政府は「正当な権益と利益の保護」を求める声明を発出した。民主党議員の一部は合意の法的根拠を問題視し、「資産強奪」との批判も出ている。また、エネルギー分析家の間では、ベネズエラの生産能力の回復には長年にわたる設備投資が必要であり、掲げられた増産目標の実現には相当の時間を要するとの懐疑的な見方が示されている。元米政府エネルギー顧問らも、将来のベネズエラ政権や米政権が合意に異議を唱えるリスクを指摘しているとされている。
トランプ政権はこの合意を、2026年1月のマドゥロ前大統領拘束後のベネズエラ復興計画「安定・再建・民主的移行」の3段階計画の第2段階に位置づけている。またロシア・中国の影響力排除という地政学的枠組みから「モンロー主義の復活」と位置づけており、ベネズエラ原油を米国の精製所で処理し戦略石油備蓄の回復にも活用する方針だとしている。













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