2025年12月19日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領によって、9つの大手製薬企業との間で「最恵国価格(Most-Favored-Nation, MFN)」に基づく医薬品価格の引き下げに関する合意が発表されました。
- アムジェンやメルクなど製薬大手9社が、欧州などの先進国並みに価格を引き下げることに同意。
- 糖尿病、がん、HIVなど幅広い疾患の薬が対象となり、全米のメディケイド(低所得者医療保険)でMFN価格が適用される。
- 製薬各社はアメリカ国内への製造投資を約1,500億ドル行い、医薬品原料の備蓄体制も強化される。
今回の合意により、アムジェン、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、ベーリンガーインゲルハイム、ジェネンテック、ギリアド・サイエンシズ、GSK、メルク、ノバルティス、サノフィの9社が、処方薬を「最恵国価格(先進国の中で最も安い価格)」に合わせることに同意した。
この取り組みは、糖尿病、関節リウマチ、喘息、C型肝炎、HIV、複数のがんなどの高額治療薬を含み、全米のメディケイド制度を通じて適用される。さらに、個人が直接購入できる「TrumpRx」を通じて大幅に割引された価格で入手可能になる。
例として以下のような大幅値下げが行われる予定:
- アムジェン「Repatha」:$573 → $239
- ブリストル「Reyataz(HIV薬)」:$1,449 → $217
- ベーリンガー「Jentadeuto(糖尿病薬)」:$525 → $55
- ジェネンテック「Xofluza(インフル薬)」:$168 → $50
- ギリアド「Epclusa(C型肝炎薬)」:$24,920 → $2,425
- GSK「Advair Diskus(喘息吸入器)」:$265 → $89
- メルク「Januvia(糖尿病薬)」:$330 → $100
- ノバルティス「Mayzent(多発性硬化症薬)」:$9,987 → $1,137
- サノフィ「Plavix(血栓薬)」:$756 → $16、インスリン:月額$35
製薬9社は、アメリカ国内での製造拠点に総額1,500億ドル(約22兆円)以上の投資を行うことを表明。さらに、医薬品原料の国家備蓄(SAPIR)にも協力し、有事の際に備える体制も強化される。たとえば:
- GSK:喘息用吸入剤成分アルブテロールを98.8kg提供
- ブリストル:血栓薬エリキュースの成分アピキサバン6.5トン分を提供
- メルク:抗菌薬エルタペネム3.5トン分を提供
これにより、外国への依存度を下げ、国内の医療安全保障にも貢献することが期待されている。
また、2025年5月に署名された「アメリカ患者向け最恵国価格の実現に関する大統領令」に基づいてこの施策が進められており、同年7月には製薬各社に価格引き下げに向けた通知が行われていた。
トランプ政権は、同年12月には英国との間で新薬価格を25%引き上げる合意を締結。これによりアメリカの患者が他国の価格統制によって高額な医薬品を負担することを回避する体制を築きつつある。














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